MLBは毎年、社会貢献や慈善活動で模範的な行動を示した選手に「ロベルトクレメンテ賞」を授与しています。
2025年は、9月に候補者30名が発表され、ドジャースのムーキー・ベッツの受賞しました。
この賞は、プレーだけでなく社会貢献や慈善活動でも大きな功績を残した外野手、ロベルト・クレメンテの名を冠したものです。
この記事では、ロベルトクレメンテ賞の概要や2025年の候補者一覧、注目選手の活動、そして受賞したムーキー・ベッツの取り組みを紹介します。
ロベルト・クレメンテとは
ロベルト・クレメンテはプエルトリコ出身の外野手で、1955年のメジャーデビューから1972年までパイレーツ一筋。
在籍中にメジャー通算3,000安打を達成し、強肩強打の名選手であると同時に、慈善活動や災害支援にも積極的に取り組んでいます。
1972年12月、ニカラグア大地震の被災者支援のため救援物資を届ける途中にチャーター機が墜落し、38歳の若さでこの世を去りました。
その人道的な姿勢は今も多くの人々に語り継がれています。
MLBは2002年から毎年9月15日を「ロベルトクレメンテ・デー」と制定し、この日は全選手・監督・審判が「21」のパッチを胸につけて試合に臨みます。
さらにプエルトリコ出身の選手、歴代のクレメンテ賞受賞者、各球団の候補者は、背番号「21」を実際に着用することが認められています。
特にパイレーツでは、全員が「21」を背負ってプレーする姿が恒例となっています。
クレメンテ賞とは:直近の受賞者と活動内容
ロベルトクレメンテ賞は、野球の実力だけでなく社会貢献や人道活動で功績を残した選手に贈られる、MLBで最も名誉ある個人賞のひとつです。
1971年に「コミッショナー賞(Commissioner’s Award)」として創設されましたが、1972年末のクレメンテの急逝を受け、翌1973年に当時のコミッショナー、ボウイ・キューンの提案で現在の名称となりました。
以降、毎年全30球団から1名ずつ候補者が選ばれ、最終的にその年を代表する選手が表彰されています。
2020年:A.ウェインライト(カージナルス)
「Big League Impact」財団を通じ、セントルイス地域の学生が週末に持ち帰れる食料を提供したり、ホンジュラスのコミュニティ全体にきれいな水を提供したりなどの貢献が評価されました。
2021年:N.クルーズ(ツインズ)
母国ドミニカ共和国で、歯科医や検眼士を派遣しただけでなく、警察署や診療所への資金提供、救急車や消防車の寄贈など、様々な活動を行っています。
また、新型コロナウイルスのパンデミックの際には、医薬品や食料の提供、経済的支援などで故郷の人々を手助けしたことも評価されました。
2023年:J.ターナー(ドジャース)
「Justin Turner Foundation」を運営し、ホームレスの退役軍人、命を脅かすような病気・疾患と闘う子供たちとその家族、そして少年野球団体を支援することを目的にロサンゼルス地域の60以上のフードバンクに食料を供給しています。
毎年ゴルフトーナメントを開催して、退役軍人の支援や、難病を抱える子供たちを勇気づけるため、病院訪問などの活動も評価されました。
2023年:A.ジャッジ(ヤンキース)
「ALL RISE Foundation」を設立し、ブロンクスやカリフォルニア州のサンホアキン郡とフレズノ郡の若者の支援に注力しているなどの活動が評価されました。
2024年:S.ペレス(ロイヤルズ)
ラテンアメリカや米国内の子どもを支援、教育・医療・食料提供活動を行っています。
母国ベネズエラで困窮した家庭への物資提供や子どもたちの手術費負担、小児病院に毎年1000個以上のおもちゃを寄付したり、車の修理やオフィスの改装など、警察官の支援が評価されました。
2025年 ロベルト・クレメンテ賞:候補者一覧
| ア・リーグ | 候補者 | ナ・リーグ | 候補者 |
|---|---|---|---|
| 東地区 | 東地区 | ||
| Rソックス | L.ヘンドリクス | ブレーブス | S.ストライダー |
| ヤンキース | C.ロドン | マーリンズ | G.コナイン |
| オリオールズ | J.ウエストバーグ | メッツ | F.リンドーア |
| ブルージェイズ | J.ベリオス | フィリーズ | A.ノラ |
| レイズ | P.フェアバンクス | ナショナルズ | T.ウイリアムズ |
| 中地区 | 中地区 | ||
| ガーディアンズ | B.ネイラー | カブス | K.タッカー |
| タイガース | T.スクバル | レッズ | B.スーター |
| Wソックス | M.トークマン | パイレーツ | P.スキーンズ |
| ロイヤルズ | B.ウィットJr. | ブリュワーズ | S.フレリック |
| ツインズ | P.ロペス | カージナルス | B.ドノバン |
| 西地区 | 西地区 | ||
| アストロズ | J.ヘイダー | Dバックス | C.キャロル |
| アスレチックス | L.バトラー | ドジャース | M.ベッツ |
| マリナーズ | J.P.クロフォード | ジャイアンツ | R.ウォーカー |
| レンジャーズ | C.シーガー | パドレス | J.マスグローブ |
| エンゼルス | L.オホッピ | ロッキーズ | K.フリーランド |
2025年注目選手の社会貢献活動
- ムーキー・ベッツ(ドジャース)
山火事被災者への物資提供や、小児患者の家族支援を財団を通じて実施。
野球だけでなく、地域社会に根差した活動を続けています。 - ポール・スキーンズ(パイレーツ)
空軍士官学校出身の背景を生かし、軍人支援活動を展開。
三振1個ごとに寄付を行い、デビューからわずか2年で大規模な支援を目指しています。 - タリク・スクバル(タイガース)
ホームレス支援や女性・子ども向けの活動を妻と共に継続。
野球界屈指のサイ・ヤング賞左腕としてプレーと社会貢献を両立させています。 - ロバート・ウィットJr.(ロイヤルズ)
青少年の野球普及活動や教育支援、ALS患者へのサポートなど幅広い活動を展開。
若きスター選手として球場外でも存在感を放っています。
2025年ロベルトクレメンテ賞 受賞者
2025年のロベルト・クレメンテ賞は、ドジャースのムーキー・ベッツが受賞。
発表と授賞式は、10月28日(日本時間)ワールドシリーズ第3戦の試合前、ドジャー・スタジアムで行われました。
ベッツは、妻ブリアナさんとともに設立した「5050財団(5050 Foundation)」を通じて、教育支援、地域医療のサポート、青少年スポーツの育成など幅広い社会活動を続けてきました。
この団体は、ロサンゼルスとテネシー州ナッシュビルの若者たちに、未来へ踏み出すための力を育むことを目的としており、
活動の柱は「身体の健康」「心の健康」「栄養」「金融リテラシー(お金の知識)」の4つ。
スポーツや学びを通じて、子どもたちが自分の可能性を信じ、社会の中で活躍できるよう支援を続けています。
2025年には、ロサンゼルスの山火事被害者への衣料支援や、ドジャース財団との協力による寄付活動、UCLA小児病院での医療支援基金「Betts on Us」など、活動の輪をさらに広げました。
また、「ブラック・ヘリテージ・ナイト(黒人文化の夜)」の一環として、初のセレブリティ・ソフトボールゲームを主催。
黒人選手やファンとのつながりを広げ、野球の裾野を広げる取り組みを続けています。
同時期には、Juneteenth(奴隷解放記念日)を記念して、
若者支援団体「Baseball Generations」を球場に招き、野球や歴史を通じて多様性と学びを伝える教育プログラムも開催しました。
ドジャース選手の受賞は、2022年のJ.ターナー以来。
社会貢献への真摯な取り組みと、人としての誠実さが評価され、ベッツがこの賞に選ばれたのも納得ですね。
ロベルト・クレメンテは、フィールドでの実績だけでなく、社会への貢献を何よりも大切にしていた選手でした。
その姿勢は今もMLBに受け継がれ、2025年のクレメンテ賞候補者たちの活動からも同じ精神を感じ取ることができ、改めてその貢献の幅広さと大きさを実感しました。
そして今年、その象徴ともいえるムーキー・ベッツがロベルトクレメンテ賞を受賞。
野球を超えた活動で人々を支え、クレメンテの精神を現代に伝える存在として、ふさわしい受賞となりました。
来年以降も、この賞を通じて「野球と社会のつながり」を感じさせてくれる選手たちの活動に注目していきたいと思います。


