2025年のドラフトのデッドライン2025年8月1日午前7時(日本時間)が近づいてきました。
でも……MLB観戦歴2年目の私には、最初は「デッドラインって何のこと?」「このタイミングで移籍!?」と正直チンプンカンプン。
メジャーリーグでは、シーズン中でも選手のトレードが頻繁に行われます。
「えっ、もうこのチームに!?」「この選手まで出しちゃうの!?」と、びっくりするような移籍がニュースになりますよね。
でも、その背景には日本のプロ野球とはちょっと違う、MLB独自の“移籍ルールがあるんです。
ルールを知っているだけで、ニュースの読み解き方や試合展開の裏側が何倍も面白くなりますよ。
このページでは、トレード制度の基本からトレード・デッドラインの意味、よく出てくる用語、実際によくあるトレードの流れまで、できるだけわかりやすくまとめました。
「ちょっと難しそう」と感じていた方も、この記事を読めば何となくでも理解できるはず。
一緒にMLBの“選手移籍の仕組み”をのぞいてみましょう!
トレード制度とは?MLBならではの特徴

メジャーリーグ(MLB)では、トレードが日常的に行われています。
トレード(交換)とは、選手Aを出して、見返りに選手Bをもらう──というような取引が、球団間の合意で行われる制度。
日本のプロ野球でもトレード制度はありますが、MLBではその頻度や影響の大きさがまったく違います。
特に7月の「トレード・デッドライン(締切日)」前には、毎年のように大型トレードが成立し、大きな話題となっています。
この時期に活発に動く理由は、シーズンの折り返し地点を過ぎたあたりで、各チームの「方向性」が見えてくるから。
ポストシーズン進出が狙えるチームは「即戦力を獲得したい=買い手」。
反対に、すでに敗退濃厚なチームは「将来のために若手や指名権を獲得=売り手」として動きます。
この「売り手と買い手」の関係が、MLBトレードの醍醐味であり、制度を知ることで戦力補強の背景や球団の戦略が見えてきます。
トレード・デッドラインとは?

「トレード・デッドライン」とは、シーズン中にトレードができる最終日のこと。
この日時を過ぎると、シーズン中のトレードは一切認められません。
トレードが正式に成立したかどうかは、MLB機構に提出された書類に記された「タイムスタンプ(提出時間の記録)」によって判断されます。
つまり、締切時間までに書類が受理されたかどうかが、すべての鍵を握っているのです。
実は、2019年までは「ノンウェーバー期間(~7月末。自由にトレード可能)」と「ウェーバー期間(8月以降。公示を通せばトレード可能)」の2段階制度があり、8月でも条件付きでトレード可能でした。
しかし、「制度が複雑で分かりづらい」「不透明な動きが起きやすい」という課題から、2019年以降はノンウェーバー方式に統一され、現在の1つだけのデッドライン制度に統一されました。
この制度変更により、トレード市場の動きがシンプルかつ公平になり、ファンにとっても注目しやすくなっています。
Q.トレード・デッドラインの日付は毎年同じ?
A. 毎年固定ではありません。例年、7月31日かその前後に設定されます。2025年は現地時間7月31日(日本時間8月1日)です。
トレード成立までの流れ(時期別の手続き)

MLBでは1年を通じて、選手のトレードができるタイミングとできないタイミングがはっきり決まっています。
ここでは、「いつ、どんなルールでトレードが行われるのか」を時期ごとに簡単に整理してみましょう。
① オフシーズン(ワールドシリーズ終了後〜翌年2月頃まで)
- シーズン終了後すぐ、FA交渉や契約更新と並行して球団間のトレードも再開されます。
- この時期は、翌シーズンのチーム編成を考えて動く期間で、契約年数や年俸を見ながら慎重に進められるのが特徴。
- 時には3球団が絡む大型トレードが成立することもあり、注目選手の去就が話題になります。
② シーズン中(デッドラインまで)
シーズンが始まってもトレードは可能です。特に、開幕直後から夏場にかけては静かな動きが中心。
ですが、順位やチーム状況が見えてくる6月以降になると、勝負をかけるチーム(買い手)と、将来を見据えるチーム(売り手)の姿勢が明確になり始めます。
この動きが加速するのが7月。トレード・デッドラインに向けて各球団が一気に動き始めます。
トレード可能な最終日(デッドライン当日)は、ファンや記者が一斉に速報を追いかける特別な日。
SNSやニュースも大賑わいです。
実際には、締切時間までにMLB機構に書類が提出されれば成立扱いになるため、締切ギリギリの「駆け込みトレード」もよくあります。
③ デッドライン後はどうなる?
締切時間を過ぎると、その年のシーズン中は一切のトレードが不可になります。
(※ウェーバー経由の移籍など、他の仕組みで選手が動くことはあります。)
トレードが再び動き出すのは、シーズン終了後=ワールドシリーズ終了直後から。
このオフシーズンの期間は、チームの将来設計を考えた「静かな編成戦」として、じわじわと注目が集まります。
派手さはないものの、長期的に影響のある移籍が多く生まれるのがこの時期の特徴です。
よく使われる用語もおさえよう

用語 | 意味(簡潔な解説) |
---|---|
FA(フリーエージェント) | 契約満了後に選手が自由に他球団と契約できる権利。 |
DFA(Designated for Assignment) | 40人枠から外す手続きのこと。球団は、7日以内にトレード、ウェーバー、リリースしなければならない。 |
ウェーバー公示 | 他球団に「この選手を獲得してもOK」と知らせる制度。他球団がクレーム(獲得希望)を出すことができる。 |
リリース | 完全に自由契約にする処理。選手は、他球団と自由に契約可能になる。 |
PTBNL(後日指名選手) | トレード時に後から選手を決める形式。6か月以内に決定、できなければ金銭で精算。 |
ノートレード条項 | 選手が契約で移籍を拒否できる権利。全チーム拒否(完全)や特定の球団を拒否(限定)がある。 |
10-and-5 Rights | MLB在籍10年+同一球団5年以上で、選手がすべてのトレードを拒否できる権利。 |
ドラフト指名権のトレード | 基本的に不可だが、バランスラウンド指名権のみ例外的に他球団とトレード可能。 |
バランスラウンド(Compensatory Round) | 収益や戦績が基準の小市場球団に与えられる特別指名枠。唯一トレード可能な指名権。 |
コンペンセーションラウンド | 主力FA流出などにより与えられる補償指名枠。バランスラウンドとは別枠。 |
実際どんなトレードがある?よくあるパターン紹介

✅ ① 主力選手と若手有望株(プロスペクト)の交換
- シーズン途中のトレードで最もよく見られるのがこのパターンです。
- たとえば、優勝を狙うチーム(買い手)が即戦力のスター選手を獲得し、見返りとして将来性のある若手選手(プロスペクト)を放出します。
- 勝負をかける球団と、未来の育成に切り替える球団の思惑がはっきり分かれるのが特徴です。
- このタイプのトレードは、「チャンピオンを狙いたい今」と「再建したい将来」のバランスを見たときに成り立ちます。
✅ ② 年俸の高いベテラン選手+金銭のセット
- ベテラン選手は実績がありながらも、年俸が高騰していたり成績が落ちていたりするケースがあります。
- そうした選手を放出したい球団が、年俸の一部(または全部)を負担する条件でトレードを成立させることもよくあります。
- 「選手+お金」という形で、相手球団は低コストで戦力を補強できるため、実はよく使われるトレード手法です。
✅ ③ DFAされた選手の救済的トレード
- DFAされた選手は、40人枠から外されて宙に浮いた状態になります。
- このとき、球団はウェーバー公示前に急ぎでトレード先を見つけようとすることがあります。
- 相手チームにとっては、必要なポジションを補う低リスクな補強手段になることもあり、タイミング次第では拾いものになる場合もあります。
✅ ④ 後日指名選手(PTBNL)を含むトレード
- トレードの時点ではまだ選手を確定できないとき、「後日指名選手(PTBNL)」という形式で合意するケースがあります。
- よくあるのは、
- まだ評価を見極めたい若手が候補の場合
- 現時点で移籍できない契約状況(シーズン途中など)
- 通常はトレード成立から6か月以内に選手を指名する必要がありますが、それができなければ金銭で精算されるルールです。
- 見方によっては、“仮押さえトレード”のような柔軟な仕組みとも言えます。
✅ ⑤ 金銭のみのトレード(キャッシュトレード)
- 「選手と金銭」のやりとりではなく、完全に金銭だけで選手を獲得するトレードも存在します。
- 例えば:
- 控え選手やマイナー選手の穴を埋めたいとき
- DFAされた選手を金銭で引き取るとき
- この形式は比較的地味ではありますが、ロースターの調整や緊急時の穴埋めとして便利な仕組みです。
✅ ⑥ ドラフト指名権が含まれるトレード(例外)
- MLBでは、原則としてドラフトの指名権はトレードできません。
- ただし、「コンペンセーション・ラウンド」と呼ばれる特別なドラフト枠に限っては、一定の条件下でトレードが可能です。
- この制度は「戦力の格差是正」のために導入されており、主に小規模球団の権利を保護する目的があります。
- こうした枠の指名権を、「選手+指名権」の形で他球団に渡すことが認められています。
Q. トレードされた選手の年俸はどうなるの?
A. トレード後の契約は原則として引き継がれ、移籍先の球団が残りの年俸を支払うことになります。ただし、元の球団が一部を負担するケースもあります(サラリー補填付きのトレード)。
Q. トレードされたら選手は断れないの?
A.通常、トレードは選手の意思に関係なく行われますが、一定の条件を満たすベテラン選手には「拒否する権利」が与えられることがあります。
代表的なのは、MLBで10年以上プレーし、同一球団に5年以上在籍している選手が持つ「10-and-5 Rights(テン・アンド・ファイブの権利)」です。
また、契約時に「特定球団への移籍拒否」を認める条項がある場合も、トレードを拒否できることがあります。
トレード制度を知るともっとMLB観戦が面白くなる!
トレード制度の仕組みを知ると、ただの移籍報道が「戦略」や「タイミング」まで読み取れるようになります。
ポストシーズンを狙うチームと再建を選ぶチームの駆け引き、シーズン終盤のワイルドカード争い、SNSで飛び交うファンの予想や噂……。
7月のMLB、特にデッドラインギリギリは選手移籍のドラマが。
難しそうに見えるMLBのトレード制度も、ひとつひとつ知っていけば意外とシンプル。
仕組みを知ることで、ニュースの見方や観戦の楽しみ方がぐっと深くなりますよ!
※今回はトレード制度の基本を中心にまとめましたが、他にも細かなルールや例外があります。
なるべくわかりやすい形で、今後も少しずつ情報を追加・整理していきたいと思っています!
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