MLBが2026年シーズンから、「ABS(Automated Ball-Strike)チャレンジシステム」を正式導入されることが決まりました。
これまで議論が絶えなかったストライク・ボールの境界線に、コンピューター判定がついに加わります。
この記事では、システムの仕組みや導入の背景、選手やファンにとって何が変わるのかを詳しくまとめました。
共同競技委員会が正式承認
共同競技委員会(Joint Competition Committee)は、
数年間にわたるマイナーリーグでの試験運用と、2025年のオープン戦・オールスター戦での検証結果を踏まえ、
T-モバイルの技術を基盤とする「ABSチャレンジシステム」を2026年からMLBすべての球場で導入することを採択しました。
ロブ・マンフレッド・コミッショナーは声明で次のように述べています。
「ファンの声を聞くことから始め、マイナーで徹底的に検証し、あらゆる段階で競技の質を高めようとしてきた。
その過程で、選手たちが受け入れられる導入方法を模索してきた。
すべての投球をテクノロジーに委ねる“フル自動判定”よりも、まず人間が判定し、その後チャレンジで確認できる方式を望む選手の意向が、今回の決定の大きな要因になった。」
ABSチャレンジシステムとは?
「ロボット審判」がすべてを判定する方式ではなく、
球審の判定を基本としつつ、必要な場面でテクノロジーによる確認を求められる仕組みです。
この制度は、試合で重要度の高いボール・ストライク判定について、
チームに迅速なリプレー検証を求める機会を与えるもの。
2008年に導入されたリプレー検証制度以来、MLBで球審の判定が「絶対」ではなくなるのは初めてです。
チャレンジシステムの仕組み
ABSチャレンジシステムは、Hawk-Eye(ホークアイ)技術と呼ばれる高性能カメラシステムを使用。
球場周囲に設置された12台のカメラが、ボールの軌道を精密に追跡します。
データはT-Mobileの5Gネットワークを通じて瞬時に送信され、
判定結果はスコアボードやテレビ中継の画面上にリアルタイムで表示。
チャレンジが行われると、「球審の判定通り」または「判定が覆る」のどちらかが即時にアナウンスされます。
ABSチャレンジ制度の主なルール
*レギュラーシーズン、ポストシーズン共に同じルールです。
🔹 チャレンジ回数
- 各チーム 2回のチャレンジ権 が与えられます。
- 成功すれば権利は保持、球審が正しかった場合のみ失います。
🔹 延長戦での付与
- チャレンジを使い切った状態で10回を迎えたチームには、そのイニングに1度のチャレンジが自動付与。
- 以後、同様に各回を迎えるたびに、使い切っていれば1度ずつ追加されます。
🔹 チャレンジできる人
- 打者・投手・捕手のみ。監督やベンチメンバーは不可。
- 判定直後に即時申告する必要があり、他の選手からの助言はNG。
🔹 合図の方法
- 帽子(打者はヘルメット)に手を当てて審判に意思表示。
👇2025オールスターゲームでの実際の判定
🔹 表示と時間
- 判定結果は、投球結果のアニメーションが球場ビジョンと中継画面にほぼ即時表示。
- 2025年オープン戦288試合で、1試合平均4.1度のチャレンジがあり平均処理時間は13.8秒でした。
導入に至るまでの検証と背景
- 2019年:独立リーグ「アトランティック・リーグ」でフルABSを初導入。
- 2022年:フロリダ・ステート・リーグでチャレンジ制を試験導入。
- 2023~24年:3Aで「フルABS」と「チャレンジ制」を比較検証。
→ フルABSは2024年末で終了し、チャレンジ制が継続・定着。
2025年もチャレンジ制が採用され、観客の72%が「観戦体験が良くなった」と回答。
さらに69%がABSの推進を支持、31%が人間の球審継続を支持しました。
なぜフルABSではなく、チャレンジ制なのか?
検証の結果、観客・選手・監督の多くが「人間味を残すチャレンジ制」を支持しています。
完全自動判定では、
- 四球が増えて試合が間延びする傾向
- 捕手のフレーミング技術が無効化される
などの課題が見られました。
チャレンジ制はその折衷案として、重要な判定の精度を高めつつ、野球の本来の駆け引きを残す方式と位置づけられています。
ストライクゾーンの定義
- 幅:ホームベースと同じ17インチ(約43.2cm)
- 高さ:上端=身長の53.5%、下端=27%
- 奥行き:ホームベース前後に8.5インチ(約21.6cm)

比較すると、球審のゾーンはやや広く丸みを帯び、投手に有利。
MLBの分析によると、カウント2-2時のゾーン面積は、
- 球審ゾーン:449平方インチ
- ABSゾーン:443平方インチ
とわずかにABSの方が狭い結果でした。
身長差への対応
選手の身長は、春季キャンプで測定員がスパイクを脱いで直立姿勢で手計測し、
その後、専門機関が精密測定を行って不正を防ぎます。
これにより、個々の選手に正確なストライクゾーンが設定されます。
オープン戦で運用スタート
2026年2月21日(日本時間)、オープン戦のスタートと共に、ABSの運用もスタートしました。
この日は、計5試合で23回のチャレンジが行われ、判定が覆ったのは13回(成功率56.5%)
ダイヤモンドバックス VS ロッキーズ戦では、計7回のチャレンジが行われ、6回成功しています。
まとめ
これまで試合を観ていて、「今のはどう見てもストライク(またはボール)では?」と思う場面が何度もありました。
そのたった1球で試合の流れが変わってしまったことも、きっと少なくありません。
そんな判定に対してチャレンジできるこの新しい制度が、ついにメジャーで導入されます。
そしていよいよ、2026年シーズンの開幕戦――
3月26日(日本時間)、Netflixによるライブ配信でヤンキース対ジャイアンツ戦でABSチャレンジが正式にお披露目される予定です。
2026年シーズン、今まで以上に1球の重みが増し、選手の判断やチームの戦略にどんな影響を与えるのか。
そこにも注目しながら、これまで以上に試合の流れを感じて観戦したいと思います。


